隠すということと、見せるということは、ある面ではとてもよく似ている。
似ているというより、それらは互いの延長線上に存在しているのだ。
「ねえねえ、今日は下着何色なの?」
「あははは、気になる??じゃあ、何色だか、当ててみて ☆ 」
チャットレディーをしていると、よくこんな風に客と絡むことがある。
女同士でする下着の話と、男性とするそれとは、女にとって大きな違いがある。
女同士での下着の会話は、時に互いの趣味を熱く語って盛り上がったり、
時に実用的な情報交換であったりと、単純に楽しい。
「 今日 、勝負下着つけてきちゃった」
「 うそ、 どんなやつ?」
「ピンクのね、花の刺繍があるやつ」
「へえ、かわいいじゃん。私もね、こないだ、赤いシルクのやつ買っちゃった」
「ええ〜〜、絶対似合う !! 」
などと女同士で語るとき、まず女はその下着をつけている自分の姿を想像し、楽しむ。
次にそれを会話の相手に置き換えてみる。
「可愛い」や「似合う」という受け答えは、この段階で生まれる。
私達は常に想像の中で、話題中の下着を身につけてファッションショーをしているのだ。
気心の知れた女友達との下着話は、
女の中に密かにある『姫ごころ』を充分に刺激し、楽しませてくれる。
ところが男性相手に下着の話をする場合、
ただ悦に入っているだけでは互いに楽しめはしない。
男女が下着について語るとき、そこにある醍醐味は「駆け引き」だからである。
「可愛い下着買っちゃった」と男の人に言った瞬間、駆け引きはもう始まっている。
これが女同士ならば、「どんなやつ?見せて見せて〜、どこで買ったの?」と、
ファッションの話題として大いに盛り上がるだろう。
だが、男性が同じ様に「どんな下着?」と聞いてきた場合でも、
その言葉が生まれる中での心のやりとりは、大きく異なっている。
なぜなら会話の相手が想像するのは、その下着をつけた話し手、私の姿だから。
「どんな下着?」
「ええ、恥ずかしいな … 。どんなのだと思う?」
「う〜ん、黒いのとか?」
「残念、はずれ〜」
「じゃあ、白かな」
「当たり。 … 実は、今それ着けてるんだ」
どれだけ相手の想像力を刺激するか、相手に好意を持って貰えるかという女の目論見。
相手のことを知ろうとする男の好奇心。
下着という存在は、男女のドラマの中で格別のエッセンスとなる。
日常では見えないはずの下着が、ふと日常の会話の中で登場する。
普段隠れた部分がちらりと見える。
ただの下着姿より、パンチラのほうがいやらしいというのは、
「隠れた」部分があるからだ。
見えないところに想像が働く。
チャットでの会話のように、実際は顔以外が見えない状態ですらOKなのだ。
そして女がそんな風に会話を楽しむことができるのは、
そのときに最高の下着を身につけているからに他ならない。たとえ、隠れていようとも。